ホテルマンが使い分ける「小道具」の謎

ホテルマンが使い分ける「小道具」の謎

ホテルマンと言えば、さわやかな身だしなみと親切なサービスがモットー。そのため陰ではいろいろと地道な努力をしているもの。たとえば、ベルボーイやフロント係などは、お得意様の体の特徴や趣味などを詳細にメモして、今後の対応に役立てている、なんて話も聞く。

さて、メモをとるときや、身だしなみとしても欠かせないモノのひとつがボールペン。ホテルマンの使っているボールペンを、

ホテルマンが使い分ける「小道具」の謎

いちいちチェックする客はあまりいないだろうが、一流ホテルでは、これらの所持品ひとつにもスキを見せてはいけない。

都内にある某トップクラスのホテルには、ボールペンに関するこんな掟まである。

『ロビーサービスに携わる者は値段の安いボールペンを、高級レストランのスタッフは高価なボールペンを所持すること」

つまり、同じホテルマンでも、持ち場によって所持するボールペンの質を、変えなければいけないというのだ。

でも、なぜ、ロビーサービスに携わる者は安いボールペンで、高級レストランのスタッフは高いボールペンなのか?・

まず、ロビーサービスのスタッフに関しては、ひと言で言えばロビーにはさまざまな生活レベルの客層が集まるためだ。そこで見た目に高価とわかるボールペンをチラつかせると、不快に思うお客さんが出てこないともかぎらない。もちろん、1本数十円程度の見るからに安っぽいボールペンでは、ホテルそのものを安っぽく見せてしまうから、そこのところは慎重に選ぶ必要がある。要するに、ここで言う″安い″は、誰でも気軽に手に入れられる程度の平均的な値段、という意味の安さにほかならない。

逆に、高級レストランのスタッフが高価なボールペンをもつべき理由は、たぶんもうおわかりだろう。フレンチレストランなど単価の高いレストランに集まるのは、一定ランク以上のリッチな客層か、そうでなくても、みな高級感を求めてやってくる、という点で共通しているからだ。そこで、ボールペンひとつにも高級感を意識する。

ただし、ここでもキラキラした飾りつきなど、ボールペンだけ浮き上がるようなこれみよがしのものはダメ。ブランドであっても、シックで品の良いモノ、これが絶対条件となる。「ホテルマンは、目立ちすぎて、お客様に強烈な印象を与えてはいけない」ため、高級ブランドもさりげなくもつのが、一流ホテルマンの良識と言えそう。