
怒鳴るお客は、とても厄介なものだ。たとえば、レストランで長時間ねばるお客に退席の催促をしたところ、機嫌を損ねて逆上し、怒鳴る。従業員の態度が気に食わない、などといって怒鳴る。なかには、単にいいがかりをつけて自己顕示したいだけの困った奴もいて、そんなお客がよく言うセリフといえば、「支配人を出せ!・」だ。こういった″取扱い注意のお客様″を、業界では″不良客″と言うのだそうだ。長時間ねばるお客のほかにも、お金を払わない無銭飲食者なんかも不良客のお仲間。なかでも怒鳴るお客は場合によっては暴力をふるう危険性もあるため、取扱いはより慎重にするべき。そこでサービス業界全般に共通する、怒鳴るお客様対策は、というと?ちょっと意外なことに、不良客に「支配人を出せ!」と強く要求された場合、店側は素直に応じるのが早道ではなかった。むしろ逆。″支配人はできるだけ出ていかないようにする″のがポイントだという。もちろん普通のお客による普通のクレーム対応なら、支配人が速やかに出ていったほうが事はスムーズに運びやすい。ところが、不良客の場合は違う。支配人クラスがすんなり出ていってしまうと、お客の要求がどんどんエスカレートしやすいため、あえて要求は受け入れない方向で検討すべきなのだとか。代わりに出ていくのは主任など。苦情を言ってきたお客=良客か、それとも単に店員に当たり散らしているだけの本物の不良客か、をとっさに判断。話し合えばわかってもらえる良客と判断すれば、支配人が出ていくし、不良客なら主任が出て゛いって「この店のことは私にまかされているので」とまずひと言。ここで多くの場合、不良客はさらに逆上。「支配人を出せと言ってるじゃないか!・」とからみ続けるだろう。それでも支配人は出さない。相手が暴力をふるおうとしたら?ここで出てくるのは支配人ではなく『警察』の二文字だ。主任はあくまで冷静に、「私どもでは解決いたしかねますので、警察の意見もうかがってみますから」と警察を呼びに行こうとする。いばり散らしていたお客は青くなり、スタコラ退場、となれば一件落着。店側としては警察沙汰はできるだけ避けたいところなので、まずは「警察」を口にして様子を見、それでも態度が変わらなければ、本当に呼びに行く。そして支配人はずっと現れない。お客ならどんな要求も通せると思ったら、大間違いなのだ。