
人間の一生の中で最大の買い物と言えば、やはり「家」。モノとしての大きさもさることながら、金額も大きい。しかも相手となるのが、不動産屋である。いい不動産屋もたくさんいるが、「悪徳」と上につく不動産屋も多いらしく、そうした事件はマスコミによく登場するので、どうしてもかまえてしまう。必要以上に疑う必要もないが、たしかに、いろいろとうさんくさいことが多いのも事実。いくら通信販売の時代だからと、家やマンションを現物も見ないで買う人はいないだろうが、実際に見る場合にも、気をつけないといけないことがある。マンションの場合、売り出されて間もないころは、まだ建物はできていない。そこでモデルルームを見て判断し、契約することになるのだが、これがクセモノなのである。モデルルームというだけあって、いかにもよくできている。まず、インテリアが凝っている。家具も理想的なものが配置されている。これにだまされてしまう人が多く、つい″いい部屋ねえ″と思ってしまう。この場合、「いい」のは部屋ではなく家具なのだが、客のほうはそんなことに気づかない。たいがいのモデルルームに置いてある家具は、部屋を広く見せるために、普通のものよりもひと回りサイズを小さくしている。ベッドなど、男性が横になってみると、足がはみ出してしまったり、実際にはとても4人も座れないようなテーブルだったりする。家具を買うときは、ベッドなら横になったり、椅子なら実際に座ってみるものだが、モデルルームの場合、そこまでする人はあまりいないようだ。むしろ、家具のない状態の部屋を見せてくれたほうがいいのだが、不思議なもので、何もないよりも、家具を入れたほうが広く見えるものなのだ。頭の中で、家具がなくなった状況を想像し、次に、実際に持っている家具をどこにどう置いたらどんな感じかを想像するという、二段階の思考が必要とされる。そのためにも、事前に主要な家具の寸法をはかり、図面を元に、だいたいの配置をきめ、メジャーもちゃんと持参してどのラインまで家具がくるかを測るなどするのが、賢い方法である。そうすると、業者のほうも、この客はなかなか慣れている、いいかげんなことでは納得しないぞ、と真剣に対応するようになってくるものだ。