
ホテルの宿泊料は表向きの値段は変わらなくても、週末サービスとか、女性サービスとか、期間や対象を限定しての割引をしているところが多い。あるいはクレジットカード会社と提携して、その会員に半額になる券を配ったりしている。そんなことして、はたして儲かるのだろうかと、他人ごとながら気になるが、大丈夫なんだそうだ。というのも、日本のホテルは、宿泊よりもレストランなどの飲食店や宴会場での売上げのほうが、全体の売上げの中の多くを占めている。平均的なホテルでも、だいたい宿泊が3割で、残りの7割が宴会や飲食店の売上げなんだそうだ。つまり、とにかくホテルに人が来てくれればいいのである。なるほど、半額の券をもらうと、「部屋代が安くなったから、食事は高いけどホテルの中でしょうか」なんて心理がつい働いてしまうものらしい。そんなわけで、半額の宿泊券をバラまいても、全体の採算は合うらしい。とはいえ、宿泊部門だってそんなに安くはできない。日本の場合は土地代や人件費が高いので、欧米と同じサービスをしようと思えば、同じ値段ではできないのだ。そこで、最近のホテルは人件費節約のため、スタッフが1人で何役もこなしているんだとか。まず、専門の電話交換手は置かない。ルームサービス、ランドリーサービスと、個別の仕事ごとに担当者がいるのではなく、そのときに手のあいているボーイがなんでもしなければならない。こうして人件費の節約をする。ルームサービスを届けたと思ったら、「次は406号室に寄って、ランドリーの引き取りをしてくれ」なんて指令を出され、そちらに向かうという徹底ぶりである。我々の知らないところでホテルのボーイさんたちは、駆けずり回っている。チップくらいはずんでほしいというのが本音らしい。