
セールスマンのマニユアルには手を替え品を替えいろいろなテクニックがありそうだが、席を移動してだんだん接近することでお客の気持ちをつかむ、というのもそのひとつ。このセールス法、旅行会社や大手不動産販売会社、各種機械の販売会社など、お客と販売員がテーブルについて、カタログなどを見つつやりとりする、というような場面でよく使われるようだ。一般的に、お客と販売員はテーブルをはさみ、向き合って座るというのが普通だ。そこで、とりあえずは対面方式になるように、お客を座らせる。販売員は、お客の目を見ながら、誠実かつ熱心に商品の説明などをするわけだ。熱心さを強調するために、テーブルに身を乗り出すようにするのがポイントだとか。向き合った位置で、十分売り込んだら、次はいよいよお客の心理を買わせる方向にもっていかなければならない。そこで、どうするかというと、対面の席から移動して、お客とL字形になる位置に座る。実は、向き合っているときは、相手に理想的な感情をもたせやすいのだという。商品を理想的に説明するには、対面の席はもってこいの位置というわけだ。では、L字形は?・これは一歩進んで、相手に親しみを覚えさせる位置。L字形に座っていると、お客は販売員の顔を見たり、視線をはずしたりするのが自由にできるようになる。つまり、リラックスできる。セールスマンは、この機会を逃さない。お客がリラックスして、気軽になったところで、話を盛り上げ、親しみを感じてもらうわけだ。最後の仕上げは、横に並んで座る。これは、相手との関係をさらに親しくする位置。L字形の場合は少し距離があるので、お客にとって、買うのを断りやすい位置でもあった。しかし、横に座られるとなかなか断れなくなる。ここで一気に買わせてしまうのだ。ただし、この席移動の術、わざとらしかったり、突然、そばに座ったりすると、逆効果。かえってお客に警戒心を抱かせてしまう。移動はあくまでも自然に、が成功のコツ。たとえば、ほかの資料を取りに行くふりをして、一度席を立ち、戻ってきたときに席を移動して座る。こんな裏ワザも必要。それにしても、セールスマンがここまで心理学を駆使しているとは驚きだ。