握り寿司がカウンターで二つずつ出てくるワケ

握り寿司がカウンターで二つずつ出てくるワケ

握り寿司がカウンターで二つずつ出てくるワケ

寿司屋の前に、「おいしくて安心な店」なんて看板が出ていたりする。この「安心」とはどういうことだろうか?

と思うのは、カウンターで食べたことのない人。

「安心」でない店とは、べつに食中毒の心配があるとか、怖いおにいさんがいるわけではない。

要するに、値段がわからないから怖いのである。

カウンターで気前よく、トロだ、アマエビだ、イクラだ、ウニだ……と注文して、食べているうちはいいが、いざ「ヘイ、おあいそ!」となって、金額を聞いて愛想笑いもできなくなった、なんてことがよくある。

壁にはその日のネタが書いてあるだけで、何かいくらかは書いてないことが多く、書いてあったとしても、それは1個の値段。たいがいは二つずつ出てくるので、考えていた値段の倍だった、なんてこともありうるのだ。

だから、「安心な店」というのは、値段がはっきりと明記されている店ですよ、ということである。

ネタごとの値段と、1個の値段なのか、1皿(つまり2個)の値段なのかも明記されている。これなら安心というわけ。

それにしても、どうしてひとつのネタを頼むと、2個一緒に出てくるのか。

上とか並のセットになっているものなら、海苔巻き以外はみんなひとつずつしか入っていないのに。

しかも、戦前はそうではなかったという。これは戦後になってから、いつの間にか始まった習慣で、客の都合よりも店の都合によるものだという。

いまなら、伝票にI回ごとの注文を記入して電卓で計算、ということもできるけど、昔は電卓なんてない。何人もの客を同時に相手をし、それぞれが何をいくつ食べたかを記憶し、おあいそとなったら瞬時に暗算する、という握る以外の能力が、寿司職人には必要とされていた。

だけど、そんな暗記・計算能力にたけている人は、そんなにはいない。

そこで、同じ10個でも、10種類のものを計算するよりも、5種類を2個ずつのほうが計算しやすい、というわけで、2個ずつ出すようになったのだそうだ。

寿司屋の世界も、ちゃっかりしているようである。